制作工程~七夕文様帷子再現作品が出来るまで~

①原材料   苧麻(チョマ) イラクサ科の多年草。別名からむし。日本列島に古くから自生し、古代から大麻と共に衣服の材料として利用されてきた。写真は福島県昭和村産のもの。茎の繊維を取り出したばかりの状態は緑色をしており、青苧(あおそ)ともいわれる。

青苧(からむしの繊維)   写真提供:㈱奥会津昭和村振興公社

青苧(からむしの繊維)   写真提供:㈱奥会津昭和村振興公社

②糸績み   ①の繊維を爪で細くさき、撚り合わせて糸にすることを績(ウ)むという。糸のつなぎ方はいくつかあるが、私の績み方は沖縄県宮古郡多良間島の西筋ヒデさんから習ったもので、2本の繊維を引き揃えるように1本に撚り合わせていく方法。

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③撚りかけ   糸車を使い、1mにつき500回程度の撚りをかける
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④糊付け   フノリとご飯、小麦粉などを混ぜて作った糊をつけて糸の毛羽立ちを防ぐ
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⑤整経(せいけい)   経糸本数約1200本を長さ16mにひき揃える
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⑥筬(オサ)通し   織幅を揃える道具・竹筬に経糸を通す、麻布は水で濡らして織るので、竹筬が必要(金筬だとサビが出るので)、また、経糸に直接「筬」を置く「地機織り」の場合、竹の方が軽いので糸に負担が少なく、良い。
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⑦経糸巻き   経糸を機にかけるためチキリと呼ばれる経巻き具に巻く
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⑧綜絖(ソウコウ)かけ   経糸を上下に開口させるための仕掛けである糸綜絖を経糸にかける
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⑨機織り   経糸に緯糸を交差させ、打ち込む。乾燥すると切れてしまう麻糸を織る時は部屋の湿度を60%以上にする。緯糸を水に浸けてから刀杼に入れ、織り際を水で濡らしながら織る。新潟県小千谷市の米岡機料店製「地機」を使用。
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photo by ヨシムラツトム

⑩糊落とし   布を湯に長時間浸け、足で踏んで糊を落とす
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⑪晒し(さらし)   布を白くするために藁灰からとった灰汁をまいて日光に干す、江戸時代の「奈良晒し」という麻布における漂白方法を研究、再現した。現代では化学薬品による漂白がほとんどであるが、繊維の損傷が少なく、麻特有の張りのある質感を保つことが出来る。
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作業しているのは友禅作家・高橋裕博さん、場所は京都府宇治市槇島町の京都文教大学の構内です。2014年10月~11月に行いました。槇島という土地の名前は地唄「さらし」の歌詞の中に出てくるのですが、江戸時代よりもさらに古い時代に宇治川の槇島で布を晒す様子が唄われています。
以下は「晒」の唄い出しの部分を引用したものです。

槇の島には、晒す麻布。賊が仕業は、宇治川の、
浪か雪かと白妙に、いざ立ちいでて布晒す。
かささぎの渡せる橋の霜よりも、晒せる布に白味あり候。
のうのう山が見え候。朝日山に、霞たな引く景色は、
たとえ駿河の富士も物かは、富士も物かは。

( 「晒」  作曲:深草検校  作詞:北沢勾等  他:三絃手事物 より )

続いて高橋裕博(タカハシヤスヒロ)さんによる「友禅染め」の工程へ進みます

⑫下絵   下絵をアオバナで描く
(下の写真は別の図案ですが、筆にアオバナを含ませて描いているところ)
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⑬糊置き   下絵の線にしたがって糸目糊をおく
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⑭地入れ   糊を生地に定着させるために水で霧を吹き全体を湿潤させる

⑮骨豆(こつまめ)   大豆を水に浸し、すりおろしたものを布でこす。できた液を水で薄めて染める所に塗る
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⑯友禅   模様にしたがって、糊を置いた内側に染料を挿す(友禅では赤色の染料は生臙脂を使うことが多いが、麻の繊維には染まらないため、朱を使用した。写真2枚目の左の袋に入っている「鶏冠朱」)
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⑰蒸し   蒸気で染料を定着させる

⑱水元   水に浸けて糊と染料の不純物を洗い流す
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⑲張り伸ばし   布の幅をととのえて完成させる
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⑳仕立て   通常は仕立て専門の方にお願いするところですが、江戸時代当時の小袖は現代の着物とは縫い方が異なるため、当方で行いました
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七夕文様帷子再現作品完成
京都国立博物館の収蔵品「七夕文様帷子」を後藤順子と高橋裕博の共同で個人的に再現しました。
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下の写真の黄色い料紙に挟まれているのは「梶の葉」です。葉先が少しのぞいています。七夕の飾りについて、江戸時代に書かれた滝沢馬琴の『羇旅漫録』に「京都では七夕の星の手向けに、小さい鬼灯提灯をいくつも笹につけ、六日の夕方に小童がこれを長い竿の先に結び付けて、その手習いの師匠の家に持っていく。暮れると加茂川へ持ち出しこれを流す。…」とあります。
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